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石膏型による鋳込み成形
栄木 正敏 

 陶磁器には、陶磁器の各種成形法にあるように、各形状、用途に対応した様々な成形法がある。この鋳込み成形は、明治初期に早くから工業化したドイツなど欧州の陶磁器産業から学び、瀬戸では大正年間からノベルティー産業で一般化した。瀬戸、波佐見では、土が鋳込みに適した磁器が産出され、早くからこの方法で人形や食器を量産してきた。近年の韓国世界陶磁ビエンナーレのカタログを見ると、「用途のある陶磁部門」は当然、鋳込み成形が多くを占めるが、アート的な「表現の陶磁部門」でさえ産業とは縁が遠いにもかかわらず、30パーセントもの作品にSlip casting(鋳込み)と記されている。陶芸を学ぶ人は、自由な造形の可能性のある石膏の鋳込み成形も学ぶことが必要である。

 カップ&ソーサーの場合はろくろ成形が主だが、このカップ&ソーサーは、鋳込み成形の特性を生かした一体成形型のカップと扇型の受け皿からなる。ハンドルの付け根が本体から離れているが、焼成すると本体に自然と釉薬で接着する。カップと手が一体のため、型数が少なく、本体内部の引けや凹みを解消できるところがアイデア。

 鋳込み成形には2種類あり、排泥鋳込み(一重鋳込み)はポットや土瓶類の袋もの、圧力鋳込み(2重鋳込み)は変形の皿や鉢類が得意である。排泥鋳込みは、泥漿を吸水性のある石膏型に流し込んで成形物を得る陶磁器の成形法で、泥漿鋳込み成形ともいう。石膏型の吸水性により、泥漿が型の壁に時間の経過で厚さを増す。一定の着肉を見て、余分な泥漿を排泥、さらに水分が減少し、着肉層が脱型可能な硬さになったら、型から外す。中空の生素地成形体となる。その後に、仕上げ、乾燥、素焼き、釉掛け、本焼き焼成となる。

 排泥鋳込みも圧力鋳込みも主に磁土を用い、水や珪酸ソーダを一定量加え、撹拌し、流動性のある型に流しやすい泥(泥漿)をつくるのが鋳込みの基本である。


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