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手描きの食器シリーズについて
栄木 正敏 

 1950〜1960年代末ぐらいまで日本の陶磁器は、世界の3分の1から4分の1を生産するナンバーワンを誇った。中部地方は日本の陶磁器生産額の60パーセントを超す産地で、中でもセトモノの瀬戸は特に有名であった。陶磁器は昭和になってから、そして戦後しばらくの間は、自動車より多い名古屋港の輸出の50パーセント以上を、30年以上も占めた時代が続いた。瀬戸市の陶磁器工場の多くは、米国など海外向けの食器、ノベルティーの低価格製品を大量に生産していた。しかし、1971年夏からの急な円高ドル安のドルショックから、産地は国内向けに転換の必要性と製品の高度化、高付加価値への転換が叫ばれ、産地に住む私は今以上にデザインの価値と力を実感したものだ。

 最初に就職した大メーカーでは、経験のない私の考えたデザインをそのまま量産になかなかできないもどかしさもあり、2年ほど勤めたころ、こんな大きなところでは自分なりのモノ作りは難しいと思うようになった。会社に時々指導に来られていた絵付けデザインの名手であった国立名古屋工業試験所瀬戸分室デザイン課長の加藤鏡一先生の影響だと思うが、私は当時衰退していた伝統技術である手描きによる模様復活と模様の新しいデザインに強く興味をいだいていた。それを果たすには小さくても会社を設立しなくてはと思っていた。

 杉浦豊和と私は前に数年一緒に働いていた経験から、1973年4月、二人で瀬戸市に陶磁器会社を立ちあげた。会社設立のコンセプトを、夢多き若い二人は日夜よく話しあったものだ。日本のモダンデザインが忘れていた手描きによる良質な日常食器の企画、生産、販売をトータルに行うこととした。そして手描きの模様のための職人を養成、半磁器中火度酸化焼成だから可能な、明るい下絵手描きの特徴を活かしたシンプルな形状のデザインとした。

 私は、会社の陶磁器デザインだけでなく、全般のデザイン、原型の製作から試作、製品化立ち上げ、自らが手描き職人であり、職人の養成と指導、流通、経営までのすべてが小さな会社のデザインの仕事と考え実行した。

 この手描きの食器の多くは、小さな会社のイメージを高める戦略で当時の通産省グッドデザイン賞(通称Gマーク選定)に応募し、連続選定された。さっぱり、すっきりのモダンデザイン製品が並ぶグッドデザイン商品の展示会で、永い伝統のある陶磁器のみが模様を許され、重視される唯一の分野であることを実感したものだ。陶芸とデザインの私の師匠である會田雄亮先生、そして手描きの良さと魅力を教えてくれた今は亡き名古屋工業試験場の加藤鏡一先生、ご両人が偶然にも当時のGマーク審査員であった。

 会社設立5年目に一連の業績がデザインの先人の芳武茂介、秋岡芳夫、小池岩太郎各先生等に認められ、「加飾の健全性を目指す企画生産及び販売の総合的推進」と評価され、財団法人 工芸財団1977年度 第5回国井喜太郎産業工芸賞を「栄木正敏とセラミック・ジャパン」が受賞し、デザインの世界で一定の評価を得る。


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