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2016年毎日新聞文化欄より
工芸の地平から「民主主義の陶磁器」
外舘 和子 

2001年 WAVEタンブラー 東京国立近代美術館収蔵

 仕事柄、記念品や試作品をいただく機会も多く、ぐい飲みと呼ばれる酒器を各種と呼ばれる酒器を各種類所有している。小さく持ち運び易いので陶芸を学ぶ学生たちに実用陶磁器の作例として幾つか見せることがある。例えばタイプの違うA,B,Cの3種。3種は時々内容を変えるが、Cだけは栄木正敏さんの白磁の酒器としている。Aは萩や備前、あるいは東京の色絵磁器の陶芸家ものなど。これらの情報を伏せてモノのみで人気投票すると大概得票が等分に割れるのは自然なことだ。土ものを好むのか、シンプルなものがカッコいいと考えるのか―学生たちはそれぞれ、外観の特徴と偽分の美意識を照らして判断する。

 しかし投票後、Cは1300円、Aは2万円、Bは5万円などと相場の価格を明らかにすると学生たちはざわつく。Cを選んだ学生たちは一番安いものを選んだのは見る目がないのか?と一瞬戸惑い、いやきっとCはまだ駆け出しの作家なのだろう、きっと高くなるに違いない−なぜならCは良くできている、波うつような高台のかたちなんて実に独創的だ−などと議論が沸騰したあたりでさらに投げかける。―Cは多分20年たってもそう値段は上がらないでしょう。そしてCの作者は駆け出しどころかこの3点の作者の内で唯一国立の美術館で回顧展も開催されている70代のベテランです。と謎を膨らませておいて種明かしする。A、Bは陶芸家が一つ一つ作る酒器。Cは陶磁器デザイナー酒器。AとBの価格差は絵画や彫刻と同じ原理だが、Cは価格そのものにもデザイナーの意志が入っている。優れた意匠で質の良い陶磁器を一人でも多くの人に多くの人に使ってもらおう。そのために作者・栄木は活動拠点である瀬戸の工場や職人が確実に量産できる斬新でシンプルな意匠を考案し、その正確な石膏原型を提供する。瀬戸の伏せ焼き技術は 高台を含めすべて釉薬が覆い、洗い易く手触りも滑らかで見た目も洗練されている。


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