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中部デザイン協会誌より転載
産地とデザイン教育
栄木正敏 

 私はデザインの領域の中で歴史は古いが一番マイナーな陶磁器のデザインを愛知県立芸術大学の教員になる48歳まで専門としてきた。デザイナーには都市型と私の様に産地に住む地場型の2つが有ると思う。
 中部の陶磁器産業は最盛期の昭和35年〜50年台前半のころから多くは3K+低賃金の日雇い時給である。そのピーク時は世界の生産のナンバーワン、自分でデザイン開発し、リスクを背負って初期投資するような雰囲気はまるでないなかったことが産地にデザイナーの存在感が無い事の理由だ。そこで公的機関のお金でデザインを都会型の有名、無名のデザイナー、建築家らに委嘱し、彼等は図面やモデルで綺麗に見せるプレゼンで提案してきた。それらは見本市、試作品止まりで立派な報告書づくりに終始した例を何十年も繰り返してきた。
 私はデザイン、原型から焼成までの実物試作を自分の工房で行ってきた。そのことは工場の現場、使用者の立場の検証の場そして自らの手と体で作りながらのデザイン思考の場でもある。
 永い間の輸出や大量生産により美濃、瀬戸の伝統の釉薬や加飾の手技、転写技術などが弱体化し、結果、無紋の白磁と形状の変化がモダンなデザインと思い勝ちで、デザインの幅が少なく、チープなデザインと価格の製品しか出来なくなっている。そこで産地を背景とした愛知芸大陶磁専攻デザインコースはデザインから焼成までの全工程を体験する課題を常に課してきた。その事は焼き物のことは何でも把握している陶磁器デザイナーとして、デザインと失った産地技術の向上の担い手として活躍を期待するからである。


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